東京高等裁判所 昭和63年(う)564号 判決
被告人 梅木伸治 外一〇名
〔抄 録〕
現行犯逮捕が許されるのは、「現に罪を行い、または現に罪を行い終わった」という状況から被逮捕者がその犯罪の犯人であることの罪証が明白であるためであるから、実行行為者及び被逮捕者たる共謀共同正犯者の挙動や犯罪現場の状況などから、現に行われ又は終了した犯罪が、共謀による共同犯行であることが明白であるときには、被逮捕者が共謀共同正犯者であるときにも、これを現行犯として逮捕することができるものと解される。関係証拠によれば、原判示のとおり、本件当日未明首都圏の各所で過激派の者によるとみられる国鉄の通信ケーブル切断事件が発生したため、警察では厳戒態勢をとっていたが、久松警察署警察官牛木巡査は、左衛門橋付近に不審者がいるとの通報を受け、本件当日午前六時四〇分ころ、同警察署の五名の警察官とともに左衛門橋付近の小公園路地に出動すると、同所に不審なワゴン車が停車しており、次いで同車の後方方面から数十名の背広姿の者が続々と現れてワゴン車から鉄パイプや中核の名入りのヘルメットを取り出して警察官らの制止を排除して武装をしていた折、前記路地から南方約三〇メートル先の路上を背広又はブレザー姿の被告人梅木、同三嶋、同中野、同寺垣を含む七人位の者が靖国通り方面からワゴン車の方に向かって来るのを認め、かつ当時は夜が明けたばかりで付近には出勤するサラリーマンの姿もなく、散歩する付近の人達の姿が稀にみられる程度であったので、牛木巡査は、その際の状況から、同人らも武装して右の中核派の集団に加わろうとしている仲間と考え、その方に一、二歩向かったところ、急に同人らが反転して逃げ出したので、いよいよ武装した中核派の集団の共犯者に間違いないと確信し、同人らを追跡し、追跡中所轄系無線でその事実を送信し、これを傍受した久松署のマイクロバスとパトカーに乗って合流してきた他の警察官の協力を得て、被告人梅木、同三嶋、同中野、同寺垣らを約六〇〇メートル追尾した東京都中央区横山町六番七号先の路上で兇器準備集合罪の現行犯として逮捕したことが認められる。以上述べきたったところから考えると、被告人梅木らを現行犯として逮捕したのは正当であ<る。>
(時國 小田 神作)